大豆100粒運動実践報告会 [2011年2月5日 於:tvk会議室(横浜市)]
【活動に協力してくれたみなさん】
大久保醸造店(松本市) 大久保文靖さん
大野川小のみなさんが私のところに来るようになって3年ですが、なんといっても原動力は先生の熱意だったと思います。見せて頂いた写真にあったように、味噌醤油以外のいろいろな活動があってこそでしょう。生徒さんも、食べ物が、何もないところから自分の口に入るまでは大変だということがわかったのではないかと思います。味噌醤油というのはありふれていますが、伝統的な食品で日本人にはなくてはならないものです。それを学校で取り上げてくれたというのも大変うれしく思います。麹の色も、今日画面で改めて見ても大変丁寧にできています。今、大人でも温度管理をして手作りするのは難しいでしょう。みなさんの努力に敬意を表します。
宮坂醸造 杉浦孝則さん
大豆の自給率を上げようという壮大なテーマに取り組んでいます。味噌醤油が日本が世界に誇る食文化であると言うことを、教育の現場から発信していきたいと思っています。これからもよろしくお願いします。
相模原市緑区(旧津久井町)農業経営士 石井好一さん
地域の根小屋小学校で大豆作りを手伝うようになって8年、去年からは味噌造りもはじめて、大きく広がってきました。おかげさまで、子どもたちから津久井をふるさとに、という言葉も聞こえるようになりました。これからは子どもたちが大豆を通じて夢を育んでいけるかという取り組みになっていくと思います。相模原市の教育長も、よくこの運動をよく知っていてくれました。運動のことをさまざま発信していった甲斐があったと思います。相模原市長と教育長には、仕込んだばかりの味噌をお届けしました。これからは、行政とも協力して、畑のない学校はまずプランターから始めて畑へ、という形で広げていきたいと思っています。今年は中央小学校で戸田先生のお話にあったように味噌造りの工程表がまとまったので、それをもとに、味噌造りをサポートする人材を増やしてゆけると思います。いろいろな人と学校が関わることで子どもたちにいい影響を与えて行ければよいのではないでしょうか。
【報告会に参加してくださった教諭のみなさん】
相模原市立鹿島台小学校 澤田利子先生
大豆00粒運動と出会ったのは、2年前の立春大吉大豆収穫祭でした。その時に子どもたちの発表を見て本当に感動して、自分の学校の子どもたちにもぜひ大豆100粒運動に参加させたいという思いが高まりました。当時は中央小学校に勤務しており、先ほどお話のあった戸田先生と、「大豆を育てたい。味噌を造りたい」という気持ちが一致しまして、食育と総合的な学習を通じて、大豆の良さ、地域の良さを学ぶという取り組みを始めることができました。今年は市内の鹿島台小学校に転勤になりましたが、やはりやりたくて、4年生の先生に提案して大豆100粒運動を続け、同じく石井さんたちに協力してもらって味噌造りをしました。当日は台風のような雨の日で、どうなることかと思いましたがなんとか仕込むことができ、夕刻には雨が上がって虹が出て子どもたちを祝福してくれているようでした。その日は午後3時から保護者懇談会が予定されており、よかったら参加しませんか、と保護者に呼びかけたところ、昼過ぎからなんと9割以上の保護者が一緒に味噌造りをすることができました。来年もやりたい、とお母さん方が大変燃えていらっしゃいます。このように、大豆を通じて子どもたち保護者地域の方、そのほかいろんな学校のお話を聞いて、みんなが一つの大きな輪になったんだな、大豆への思いが大きな温かい輪になって広がっているんだなということを実感しました。大変いい発表の場に参加させて頂き、大変嬉しく思います。
相模原市立相模台小学校
澤田先生と一緒に中央小学校で大豆に取り組みました。中央小の給食は大変美味しいのですが、最近の子供はやはり洋食を好みがちで、煮物などはどうしても残量が多くなります。それでも、大豆の栽培に取り組んでからは、特に育てたものに対しての関心が高まり、豆だけは残さない、など、食べ物に対する意識が大きく変わりました。みそ汁ひとつとっても、このお味噌も豆腐も大豆だ、と考えるようになりました。私も今年異動になりましたが、昨年の4年生からは「自分で仕込んだ味噌ができて、家族で美味しく食べてうれしかった」、1・2年生の時に担任した今年の4年生からは「今年は大豆を育てています」という手紙をもらってうれしく思っています。私は米作りをしている5年生の担任をしており、家庭科の授業で収穫したお米を炊いたのですが、このとき、「去年大豆をやっていれば、仕込んだ味噌でお味噌汁を作ることも出来たのに」と考えたりしました。みなさんの発表を聞いて、生活科の授業で取り組むことができるんだな、とヒントになりました。さきほど澤田先生からお話がありましたが、やはりなかなか一人では出来ない。でも、調理師の先生や地域の方たちのお手伝いをいただいて、輪が広がっていくのがまた喜びだなと感じました。
横浜市立下郷小学校 伊藤先生
今年、初めてこの運動を知って参加しました。個別支援 級の6人の児童をふたりで担当しています。小さい畑で 苦労しながら育てました。それでも、子どもたちも、保 護者も私たちも、本当にやってよかった、と思っていま す。来年、このまま勤務できるかわかりませんが、この 学校に残っても異動しても、大豆に取り組みたいと思っ ています。そうして運動を広めて、チャンスがあったら 味噌造り・醤油造りにも挑戦したいと思っています。
下郷小学校の畑 | 下郷小学校 立春大吉大豆収穫祭のステージ |
聖ヨゼフ学園 西村先生
絵画コンクール銀賞 聖ヨゼフ学園の作品 |
横浜市の鶴見にある私立の小学校です。総合の時間に、 子どもたちと試行錯誤しながら畑で大豆を育ててきました。枝豆が大豆であることも知らない都会っ子ばかりですので、いろいろなことを教えてもらったり調べたりして、活動を続けている最中です。いろいろな取り組みを 他校でなさっていることを聞いて、ぜひ持ち帰って参考 にさせて頂きたいと思います。
【ご挨拶】 大豆100粒運動を支える会会長 辰巳芳子
今日はお忙しい中遠いところからお集まり頂きありが とうございます。大豆100粒運動を支える会の運営に 携わっている者としてずっと気にしておりましたのは、 学校間の交流をもつことができないことでした。私たち も、参加校をおたずねして、抱いてらっしゃる問題をう かがったり、他校の情報をおつたえしたり、ということをずっとしたかったのですが、なかなか実現できませんでした。今日初めて学校間の交流を持つことが出来ました。本当を言うと、このような集まりがなければ大豆100粒運動の将来はないと思っています。
私は豆まきの向こうを見ています。豆という命から、人間は自分の命と出会うのです。ものの命というのは不思議なものです。人の命を手引いていきます。なぜ豆をまくのでしょう。花を育てるのとは全く違います。育てたもので多様に命を養う豆を育て、豆の命そのものと出会うことによって、生きてゆきやすい命が育つということです。先生方にも、常にそのことを見て頂きたい。豆を育てると言うことは、ただ単に育てて収穫したものを食べる、それだけではありません。そこに留まっていると、100粒運動の真意に達することが出来ません。自分の命と本当の意味で出会うことが出来る子供、「人間」を育てること。なぜだかわからないけれど、なぜか大豆の命が人の命を育てます。それに気づいて頂きたい。そして、先生方も自然にお育ちになると思う。それが、私が最も望んでいることです。なぜ人は生きるかということに自然に気づいていきます。豆まきをすることによって、自分の命への手応えを子どもたちがどれほど感じることでしょう。それはいろんな困難にあっても耐えていくことができる人格を、言わず語らずに育てます。
大野川小学校では、3年続けて大豆を育ててくれました。出来る環境があれば、ぜひ2年生から卒業するまで毎年豆まきを続けさせて下さい。必ず記録を取り、絵を継続して描かせて、大切に保管してください。それを一生持っていれば、誰に励まされるよりも、その方を励ましてくれるはずです。年を追っての自分のものの見え方、書いたもの。その記録が自信になるのです。年ごとにいろいろなものを育てるのとは違います。自分自身を突き放して見ることができるようになるのです。
今日はいい集まりが出来ました。来年は、みなさんぜひお知り合いを連れてこの場にいらして下さい。2倍にも3倍にも参加者を増やしてください。ありがとうございました。