大豆100粒運動実践報告会 [2011年2月5日 於:tvk会議室(横浜市)]
【報告2】相模原市立中央小学校 4年生担任 加藤幸世先生
去年の4年生が初めて大豆100粒運動に取り組んでいるのを見て、私もぜひ大豆を今年の4年生でも、と思っていました。ただ、4年生になったから自動的に大豆をやる、ということではなく、子どもたちから自発的に大豆に興味を持ってもらうにはどうしたらいいかということで、担任一同いろいろ考えて計画を練りました。その一歩として、子どもたちに「今年総合的な学習の時間に何をやりたいか」子どもたちに問いかけてみたところ、こちらが心配するまでもなく子どもたちはみんな、口をそろえて「大豆をやりたい」と。去年の4年生が味噌造りをしているのを見て、ぼくたちもやりたい、と。やはり子どもたちは見ているんですね。大豆の取り組みを始めるにあたって、子どもたちはこれまで大豆に関して調べたこともなく、知識もない。誰かに聞いて調べなくてはということで、まず家の人や近所の方に聞いてみて、それぞれ調べたことを発表しました。中には、お家の方が大豆の加工に携わっているというケースもありました。しかし、それでも情報量が少ない。
そこで、身近な人で詳しい人はいないか、ということで、学校の栄養士・戸田先生なら、給食で大豆を扱っているし詳しいのではないか、戸田先生に話を聞こう、ということになりました。戸田先生が、いろんな種類の大豆の見本を見せながら「この地域にも津久井の地大豆というものがあって、石井好一さんという方が育てていて・・・」という話をしたところ、自然な流れで、子どもたちから、「石井さんに話を聞きたい・教えてもらいたい」という声があがりました。
そこで、(事前に担任から連絡はしておいたのですが)子どもたちが直接石井さんに連絡を取り、学校で大豆についての授業をしてもらうことをお願いしました。石井さんに来てもらうにあたって、子どもたちは本やインターネットで大豆についていろと調べましたが、調べるうちにいろいろな疑問が出てくる。その疑問を石井さんに投げかけて充実した質疑応答があり、いろいろな知識を得ることができました。
そして、いよいよ種まきです。中央小学校 は相模原市の中心部にあり、土は花壇程度しかありませんので、プランターでの栽培です。まず、土作りに取り組みました。昨年使った土と、新しい土を混ぜ合わせて準備をして、植える間隔・深さ・水やりの方法や量などを詳しく教わりながらの種まきでした。ひとつひとつのことに新鮮な驚きがあったようです。
そのあと、毎日見守っているうちに 2〜3日で芽が出ます。この芽を鳥に食べられてしまうお それがあるということを子どもたちは調べて知っていまし たが、じゃあ、対策をどうしよう、ネットをかけよう、でも、ネットはどこから手に入れればいいか、去年4年生が使っていたものを使わせてもらえないか、去年の4年 生の先生に聞いてみよう、とここまで子どもたちは解 決法を考えて、プランターに無事にネットを張ること が出来ました。
順調に成長していく大豆を見守ってい く中で、子どもたちは大豆への興味を高めて行き、観察記録には丁寧に色を塗って大豆の葉や花の様子が描 かれています。ただ、問題は夏休みの間の管理です。 プランター栽培の場合は特に、水を絶やさないように といわれていたので、そのためにどうしたらいいか、 これも子どもたちに考えさせました。水やり当番を決めようということになりましたが、ひとり何回、と決めるまでもなく、自発的に「私はこの日行ける」「僕はこっち」と自分から計画を立てて、1日4人だったり6人だったり、みんなが計画通り学校に来て、水やり・観察をしている姿が見られました。
実がつき始めると、一層子どもたちは大豆への気持ちが高まって、当番でなくても学校に様子を見に来たり、野球 のついでに来て水をやったり、という子もいました。 枝豆が大きく育ってくると、子どもたちから「枝豆 で食べてみたい」という声があがってきました。教師の側では、大豆まで育てる、ということしか考え ていなかったので、当初の計画にないことでした。 そこで、一部を収穫して、家庭科室でゆでて食べて みました。日頃、給食でも好き嫌いのある子供が多いのですが、「食べない」という子がいないだけで なく、全員が「おかわり!」というほどで、食べ物・ 食に関する考え方が急激に変化したのを感じました。もちろん、この枝豆が体験したことがないほど甘くて美味しかったということも驚きだったようです。虫食いがあっても、その部分をはじいて「これ、食べられるかな」と聞いてきて大切に食べていたり、一粒に対しての意識が違ってきたようです。
そして、大豆は枯れて色を変えてゆき、収穫を迎えました。11月の学習発表会では、教室内にブルーシートを敷いて収穫した大豆を枝ごと置き、サヤだしを来校者の方にも体験してもらいました。味噌造りをしたいという気持ちは盛り上がっていますが、プランターでの栽培では量が足りません。味噌造りについては、 石井さんにお願いして大豆を譲って頂き、自分たちで 作った大豆は給食に使って学校の全員に食べてもらお うということになりました。選別した大豆を、調理員 さんに手渡し、全校に放送をかけてお知らせしました。 その文言も自分たちで考え、「とにかく残さずに食べてほしい」という願いを込めています。実際の味噌作りでは、私も積極的に関わりたかったので、朝のあく取りからやらせてもらいました。本当にわくわくしました。その日は、体育館で全校朝会の日で、大豆を煮る鍋は体育館の横にありましたので、通りかかる全校生徒が大鍋で大豆が煮えている様子を見ることができます。興味を持った子どもたちには、煮えた大豆を試食させてもらったりして、おいしい!という声もあがり、全校生徒に大豆の関心が広がったように思います。味噌作りの作業に入る前に、宮坂醸造の杉浦さんに紙芝居をやっていただきました。実は、この紙芝居を見るのは子どもたちにとって2回目なのですが、1回目よりも、もっと集中して興味を持って見ているのがよくわかりました。1回目に見たときより、いろいろな体験をして知識も増えていますし、さあこれから味噌造りだ、という気持ちが高まっていますので、楽しいという気持ちだけではなく、科学的な知識という面でも充実している様子がわかりました。こうやって、ひとり3キロの味噌を仕込みました。
子供たちは、すぐに持って帰りたい!と言いました が、担任はそれを想定していなかったので、手提げ 袋を用意させていません。こうやって手で持って帰 るから、と言うのですが、かなり交通量の多い横断 歩道を渡ったりするので、なんとか説得して、翌日 持ち帰らせました。家庭での様子を聞くと、その日 はとにかくお家の人と、味噌の話で持ちきりだった ということでした。味噌を仕込んで、活動として一 段落したと思っていたら、子どもたちには、次の4 年生にもぜひこの体験をしてほしいという声があが りました。ちょうど、国語の単元で「報告書を作ろう」という勉強をしていたので、4年生全員が「大豆報告書」を作って、現3年生に手渡すことにしました。また、今日の午後の発表のために、大豆栽培の記録を大きな紙芝居にしたものを作ったのですが、これをぜひ全校生徒の前でも発表したいというアイディアもでました。このように、教師の側から「これをやろう」「あれをやろう」と提案するのではなく、子どもたちが自発的に興味を持って意欲的に提案してくれました。そして自分たちの「よかったよ!」という気持ちを伝えたいという姿勢が生まれたのがよかったと思います。
味噌作りを終えて(2010/11/30) | 立春大吉大豆収穫祭のステージ |
相模原市立中央小学校 栄養士 戸田千鶴
中央小では昨年から大豆100粒運動に参加していますが、以前から現代の子どもたちに「豆・海草・根菜」を進んで食べてもらうようになってほしい、ということで12年ほど前から、「0がつく日はお豆の日」「5がつく日はゴボウの日」などと決めて、その食材を使ったメニューを提供してきました。昨年たまたま、当時の4年生の担任だった先生が「大豆に取り組みたい」と言ったときに、自分もこれまで「お豆の日」などの取り組みを生かして何か一緒にできないかと考えました。大豆を使った給食メニューは子どもたちが進んで「大好き」ということはあまりなくて、昔からの食材なのに、煮物などは得意ではありませんでした。自分たちが栽培に関わると、こんなにも変わるのかと実感しています。4年生の授業の導入の部分では「学校にはお豆の日があるよね、なんでかな」「給食で食べている大豆はどこから来るのかな」「津久井にはこんな大豆があるんだよ」ということをお話ししました。実際に大豆を育てる段階になると、本当に子どもたちは本当に一生懸命でした。中野小学校のお話でもありましたが、たとえば味噌造りでも、担任の先生だけでは朝からずっと大豆を煮る鍋を見ていることができません。そこで、どうやったら、地域の方の手を借りて、学校内のスタッフで、味噌造りの準備から子どもたちが持ち帰るかまでをスムーズに進めることができるかという段取りを、工程表にまとめました。(添付資料)このような形にしておけば、人員が替わってもこの取り組みを継続することが出来るのではないかと考えています。 味噌造りをした学年以外にも、大豆への意識を浸透させたいと考え、節分の日には、相模原市の全学校に呼びかけて、津久井の大豆を使った炒り豆ご飯を給食に取り入れました。残念ながらすべての学校では実現しなかったのですが、7割近い学校と給食センターで炒り豆ご飯を提供することができました。本校では、相模原市の教育長はじめ教育委員会の方、生産者の石井さんもお招きして一緒に炒り豆ご飯をいただきました。その際に、4年生の子どもたちが放送でその由来を説明し、6年生の先生が青鬼に扮して各クラスをまわって、大変もりあがりました。9日には、子どもたちの育てた大豆を給食に使います。大豆は子どもたちの得意な食材ではなかったけれど、このように学習の面と連携しながら子どもたちの食生活について、何か進めて行ければと考えています。今年の4年生が、現3年生に大豆の育て方を伝え、大豆を手渡すことになっています。津久井の大豆が「中央大豆」としてこれからも伝えられていくといいな、と思っています。
2010/12/27
相模原市栄養士有志による味噌仕込み
相模原市内になんとか広めたいということで、 市内の栄養士に声をかけて、津久井の石井さんの農場に、有志で種まきから栽培に挑戦し ました。栽培に参加しなくても、自分たちで仕込んだ味噌を来年から給食に出せるように しない?ということで12月に、みんなで集まって津久井で味噌を仕込みました。26校で使う予定です。