2007年度「大豆100粒運動」活動状況調査結果
2004年5月に「大豆100粒運動の意志」を理念として、長野県から始めた「大豆100粒運動」は、各地域で徐々に進展しています。各学校での大豆100粒運動の成果をまとめ、今後のこの運動の推進に役立てることを目的として、活動状況の調査を始めました。
子ども達は、土と触れ合う中で、姿を変える大豆を通して、いろいろな人と接する中で成長していきます。それを見つめる教師は、子どもの成長に拍手を贈りながらも、気がつくと成長していたのは自分自身だったのかもしれません。
最近においては、食料自給率の低下、加えて「食の安全」があちこちで脅かされ、大きな社会問題にまでなってきていますが、今こそ「大豆100粒運動の意志」を改めてひも解き、この運動の原点を再認識できるのではないでしょうか。
調査結果 (2008.02.18集計)
1 回答のあった学校等・・・88件
長野県 小学校61校(北信23校・養護1校、東信8校、中信21校、南信8校)
神奈川県 小学校19校、中学校2校
その他 小学校 5校(愛知2校、兵庫1校、島根1校、京都1校)
事業所 愛知 1件
2 取り組んだ年
- 2007年のみ 57校
- 複数年に渡るもの 30校(長野28校)
3 取り組んだ学年(長野は大半が2年生)
1年6校、2年106校、3年17校、4年11校、5年3校、6年2校、部活1校
中学校2校
4 取り組んだ児童・生徒数 ( )は長野県の数
- 2004年 228人(228)
- 2005年 1,005人(1,005)
- 2006年 1,698人(1,175)
- 2007年 5,738人(3,592)
- 4年間合計 8,669人(6,000)
5 大豆について
(1) | 大豆の種類 津久井在来(神奈川)、ネカセンナリ(長野)、矢作大豆(岡崎) その他(フクユタカ、サチユタカ、エンレイ、青バタ・・・各1) |
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(2) | 栽培の状況 畑72校、学校園(花壇)12校、プランター4校、植木鉢(1人1鉢)5校 | |||||||||||||||||||
(3) | 使用した肥料 堆肥38校、牛ふん8校、鶏ふん4校、化学肥料6校、石灰3校、 ヤギのフン・大豆畑の土をもらった 各1校、 肥料なし16校 |
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(9) | 大豆で作った物・作る物 豆腐 65校、 きな粉 49校、 枝豆31校、 味噌 17校、 納豆 12校、 いり豆11校、 豆もやし・おからクッキー・ずんだもち 各5校、 大豆サラダ 4校、 豆ごはん・大豆ハンバーグ各2校、 その他(ココアおからスコーン・大豆餃子・豆カレー・豆乳・ひすい白玉・しょうゆ・おから)各1校 |
考察
1.取り組んだ学年や児童生徒の数
まず取り組んだ学年は、2年生が圧倒的に多く、次いで3年生、4年生の順です。
取り組んだ児童生徒数は、2004年が228人(長野県のみ)だったのが、2007年には5,738人で、4年間の合計は8,669人(このうち長野県は6,000人)と確実に増えてきています。
2.大豆について
多くの学校が、地大豆(津久井在来・ネカセンナリなど)を、広さはまちまちだが畑で栽培していました。中には植木鉢でひとり1鉢という学校もありました。また使用した肥料はやはり堆肥が多かったのですが、いい土だったのでしょう肥料なしという学校が16校もありました。
蒔いた・芽が出た・花が咲いた・収穫した時期にかなりのずれがあるのは、地域的な広がりがあることからみても致し方のないことです。蒔いた時期は6月初旬前後が多く、7月下旬もありました。芽が出たのはその1週間後に当たる6月中旬を中心としていました。また花が咲いたのは8月中旬が多く夏休みと重なっていたようです。収穫の時期は、9月中旬から12月上旬までと長い期間に亘り、10月下旬から11月中旬にかけてが多かったです。
収穫量は学校によってまちまちでした。10キロ以上とれた学校が3分の1を占めましたが、残念ながらほとんど0の学校も6校ほどありました。中には、昨年は虫にやられて0だったが、今年はいろいろと工夫を凝らしたので15キロもとれたという学校もありました。
子ども達が楽しみな大豆で作るものは、豆腐・きな粉・枝豆がベスト3で、味噌・納豆と続きます。
3.児童について
子ども達は、土と触れ合いながら、非常に興味深く大豆の生育を見つめて、とても丁寧に観察記録をまとめていました。そこから思いもよらない発見をしたり、いろいろと工夫を凝らす事により、命の大切さや植物の持つ神秘さ、さらに大豆が持つ生命力に気づきました。
中でも、大豆の歌にもあるように大豆の大好きなハトやカラスに頭を悩ましました。その対策をめぐらすことにより、大きく育った時の喜びはことさらで、また子ども達の創意工夫や自主的な態度も培われるという貴重な体験をしました。
そんな子ども達のエネルギーが、自分たちで大豆の歌を作ったり、オペレッタにまとめたりという意欲につながったのでしょう。
4.先生方について
学習時間としては、生活課や総合的な学習の時間を使ったりして長時間かけての息の長い学習が展開されています。そこには数々の教師の思いが込められています。また、子ども達の活動の中にその成長をみとっています。それは、机上では学ぶことができず、大豆栽培という体験を通したからこそ学べたものであったのです。
これらについて、具体的にいくつかあげてみましょう。
- 栽培や調理を体験的に取り組むことで、生産する喜びを知り、人や食への感謝の気持ちが育ってほしい。
- 自分とつながる「命」というものを感じ、命をいただくという意味を学んでほしい。
- 大豆への思いから、大豆と同化し、成長を喜び、いつの間にか自分の喜びになるという体験を通して、心の成長や生きる力が育ってほしい。
- 栽培時でも、調理時でも“自分たちの力でやる”という事や“失敗してもそこから学んでいく“という意気込みを身につけさせたい。
- 困ったことに対して乗り越えようとして自分から調べたり、子どもたち同士で工夫を出し合ったり協力しあったりの姿が見られた。
- クラス全体が一つとなり、自分たちで頑張るんだという意気込みが感じられた。
5.保護者や地域の方の協力について
多くの保護者は、年間を通して一つのことに取り組む大豆の活動に賛同し、プラスの評価をしてくれました。
それだからこそ、夏休み中も大豆の育ちを気にして子どもと畑に来て、草取りや土寄せをしてくれたり、家庭でもプランターで栽培して親子で興味深く観察したりしたのです。そこには当然のことながら、親子のコミュニケーションが膨らみます。
また、子どもも親の仕事を自分から手伝うという積極さも見られるようになりました。さらに子どもが自分たちの「食」に関心を持ったり、感謝する優しい心が育ち、「命を大切にする」という気持ちにつながっていることにも感謝されました。
この活動には、地域の方々のご協力が欠かせません。多くはボランティアという形で、畑作りから、栽培、途中の世話、収穫、そして大豆製品づくりといろいろな形でご協力願いました。それが、学校と地域とのつながりをより緊密にしたとも言えます。
最後に、地元の教育委員会とのつながりは「特にない」が大半であったが、気が付いていないということもあるようです。ある学校では、実績を評価され発表の場を与えられたのをきっかけに、子ども達が自信を持ち積極的に活動するようになったという報告もありました。
6.自由表記の中から
- 自分たちで育てた大豆が、様々な食品に変化することを理解した子ども達の嬉しそうな表情を見ることができ、この活動の意義を感じました。(愛知M小)
- 手間暇かけずに「食」生活をしているのが一般的になってきているのでは?と思われる現状である。こんな時に「大豆100粒運動」に出会えたことはタイムリーであった。「大豆」が日本人の食事にとってなくてはならないものであるのに、ほとんどが輸入に頼っていること、津久井在来大豆の貴重さなどを考えるきっかけとなった。(神奈川M小)
- 生活科が各教科の一つとして位置づいた時から、「大豆は2年生で」というようなものがあったように思い、2年生を担任すると大豆を核として植物単元を学習しています。今回は大豆100粒運動の一環としても学習が進められ、ありがたかったです。(長野・北信T小)
- 大豆さんとの思い出をどうやってみんなに知らせようか考えていた時に、大豆さんの歌をつくりたいという意見が出ました。子ども達が詩をつくり、ふしをつくり、オペレッタ「がんばれ大豆くん」をつくりました。動きや音もつけました。生活科・総合的な学習の発表会で、全校・保護者の前で発表させてもらい、とても好評でした。(長野・東信S小)
- 食や大豆に対する思いがすばらしく、教材として扱うに値する活動だと思います。ありがとうございました。大豆作りの感動を人形劇にしようと、今取り組んでいます。(長野・南信O小)
- 大豆を題材にした青空教室「だいずきっず倶楽部」〜ともに育つ環境づくりの種を植えよう〜を2006年10月に立ち上げた。この活動は、食を通して「共育(きょういく)」をテーマに“親と子”“地域の方々と私たち”そして“大豆と私たち”が共に育つ環境づくりの種を植えていき、その輪を大きくしていくことがねらいです。(愛知O工房I)
最後にとてもお忙しい中、ご丁寧に活動状況調査にご協力いただきました皆様方に感謝申し上げます。